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12. Vintage Wine Spirits,and Roses
岡田作曲.空間の広がるローズピアノのような音と,エレキギターの組み合わせが奇跡的なサウンドを聞かせる,21世紀の,未来のロックだ,と感じた.とにかくメロディーがすばらしく,潰したトランペットと,効果的な拍数で刻んだドラムに何度聞いても泣きそうになってしまう.ライブの時,この曲の演出に,テーブルと椅子がステージに用意され,そこの椅子に女性が無機質に腰掛け,その女性の向かいに慶一が座し,最小の動作でこの曲を歌っていた.なんてすばらしいステージなんだろうと,未だに,感動が離れない.
10. 11月の晴れた午後には
武川作曲.メロディー的には60年代ロック,キンクス風な,黒鍵盤を多様した,といった感じの要素が聞けるが,アレンジの面でのコンボ,バイオリン,アコーディオンなどのアンプラグド楽器が,暑い国の民族音楽のようだ.作者もメンバーも,決してその方面の音楽を敬愛しているとは思えないけれど,ライダーズにはなぜかよくこういうタイプの仕上がりにした曲を出す. 11. 腐った林檎を食う水夫の歌 慶一曲.どこまで本気で作ったのか知る術はないが,ムーンライダーズらしいバンドソング.口笛や,コーラスはこのバンド特有の楽しさに溢れ,アルバムの緩急をつける.重厚なアルバムであるはずの今作において,どうしてこれを収録したのだろうか.しかしここでもメンバー紹介がされ,恐らくこれはこの曲のアルバムでの役割を示している.つまり,その可能性は無限大,単純な曲ほど,彼らは真意を沈めている場合も,ある.
9. 馬の背に乗れ
博文作詞,良明作曲.ここでもXTCぽいのを作っているのは非常に興味深い.とにかく弾けたパンクである.歌詞も博文独特なナンセンス要素が詰まってい,その耳障りが,かしぶちドラムのノリと,マッチしていて,心地よい.楽器アレンジはドラミング以外,ほぼしていないと考えていいいだろう.コード表のそのままに演奏したといったようなラフさがある.しかし,そこはライダーズ,コーラスアレンジが秀逸なので,この曲はしっかりと完成である.
8. Serenade and Sarabande
緩やかなアメリカのカントリー風で気だるく始まり,後半怒涛の変貌を遂げる.かしぶち哲郎がMODERN MUSIC 以来,再びムーンライダーズを引っ張ることとなる,壮大でアルバム最強の曲.歌詞で,自分たちの自己紹介をするところを見ても解るよう,今後,ムーンライダーズ,というバンドにおける代名詞の役目となるだろう.そもそもかしぶちの評価は90年代,軽視されすぎて来ていたという部分に問題があったのだ.デビューから,休止まで,彼の活躍はリセットされ,ここまで辛抱を余儀なくされて来た.それは,ドラムがシーケンサーの発達により,生で叩く機会が極端に無くなったことも原因かもしれない.しかし,最近の数枚,かしぶちドラムがライダーズに再び顔を見せ始め,それに伴い,彼の作曲能力も復活した.この傑作は,ギャップの度合いが激しく,まるで,60年代,LSDづけになっても完成に漕ぎ着けず,頓挫,近年漸く大完成した,あのブライアンウィルソンのスマイルの様だ.
5. 琥珀色の骨
博文作.bonyari bonyariでも見せた,オールディーズのようなどこか懐かしい曲である.博文氏の曲は,すごく変わってるタイプと,すごく聞きやすいタイプ,両極端な作家で,今回は後者だった.初めて聞くのに,どこかで聞いた,しかし,そう油断していると,全く違うメロディーが出てくる.耳なじみが早い分,ほんの少し変わっただけでプログレばりの変容を遂げる. 6. Dance Away かしぶち 哲郎 .明るく,軽快なリズム.賑わうアンプラグド楽器に,楽しいコーラス.なのにどうしてこんなに悲しいのだろう.メロディーに一抹の不安が最後まで消えない,悲しい曲だ.曲,アレンジ,歌詞,全てにおいて十人十色,絶妙なすばらしい音楽である. 7. ワンピースを、Pay Dayに 鈴木慶一がおくる,どうしても,やはり,俺は思う存分やりたいのだ,という感じの,思いっきり慶一節の曲である.これも,完全にわざとなアコースティックサウンドに仕上げた.今回のかしぶちドラムは非常に軽い.その中でも最たるものがこの曲である.アルペジオギターの単音が緊張感を最後まで演出している為,聞き終わりまで気は,抜けない.
3. Rosebud Heights
慶一作詞作曲.構成,メロディー,さらにはアレンジの面でも今までの作品に比べ,幾らかシンプル.愛はただ乱調にある,の雰囲気であり,ヴィデオ・ボーイ的な軽さを持つ.ただ,こういうすかした曲は,このバンドにおいて,重要な意味を持つ.十分な及第点,色々いじって複雑にせず,欲を捨てここで堪えた,我慢が勝利,の曲. 4. WEATHERMAN 初めから狙って作った,と言った感じの,真夜中の玉子の姉妹作だろう.ある意味,このアルバムの方向を示している.様々なコンセプトが混在している様に感じたこのアルバムだが,製作期間からみて青空百景の要素もありそうだ.イントロで始まるギターの雰囲気を一瞬にして払拭する,キーボード.ラップ調のボーカル,コーラス,全て完璧に模倣できている.
1. Cool Dynamo, Right on
30周年という煽りを十分に作って,満を持して発売されたアルバムの一曲目として考えると,意表を突いている.複雑に織り込まれた編曲なのに,すんなりと耳になじむ,さわやかなサウンドは彼らがいかに優れたセンスを持った集団であるかを示している.コーラスや,あくまでアコースティックなサウンドからそれないアレンジにこだわりがみえる.30年バンドをやっていても絶対に古くならない音作りに,溢れる才能を感じざるを得ない.去年アルバムを出したばかりなのにすぐまたアルバムを作れるのは,その辺の部分が枯れていない,未だ健在ということの表れだろう. 2. 果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ! 前作のヤッホーヤッホーナンマイダと系統も編曲も同じの,今のライダーズにぴったりなロックナンバー.歌詞も,いかにも白井節である.勢いとノリのよさで,とても聞きやすい.サビのナンセンスな盛り上がりが80年代のXTCぽく,やけくそ感がひたすら楽しい. ムーンライダーズの新譜が出た.前作から一年半,彼らはやたらと忙しそうだった.P.W Babies Paperbackを出した後のツアーで,新作を出す,と言っていて,初めは勢いで言っているんだろう,と思っていた.でもちゃんと出た.サウンド的には前作よりさらにバンドサウンドであるように感じ,Dire Morons TRIBUNEで見えた極上のやりすぎ感が,また少し,顔出している.独断の全曲解説をしたい.
9,Riding To Vanity Fair
鉄琴とストリングスの暗めな曲.もとのバージョンはアップテンポのロックナンバーだった.アルバム製作にあたり,あまり期間を設けなかったのか,メロディーはやはり他の曲にどこか似た傾向のもので,良く言えば統一感,悪く言えばインパクトがない,気がしてしまう.ただ,アレンジの面ではなかなか渋く,心地よい具合に仕上げている.何か映像に音楽をつけたい時,非常に重要な役目を果たしそうな,そんな曲じゃないだろうか. 10,Follow Me ポールらしい名曲.聞きやすいだけでなく,いい思い出と供に浮かび上がるような柔らかさのあるメロディーで,アルバム後編を盛り上げる. 11,Promise To You Girl オープニングと同じ勢いをもつ,ポール得意の組曲風のナンバー.ピアノのベース音の弾き方といい,テンポが半分になるドラムアレンジといい,実にポールらしい.このレベルになると,バラード調になりがちのところを,こういう若く,荒々しいサウンドをしてくれるポールの探究心に感服だ. 12,This Never Happened Before ここからアルバムの終焉へむかうバラードが続く.前作のアルバムから引き継いでる,今のポールによるバラードである.ラストのアレンジが余韻を残し,耳から離れない. 13,Anyway 前の曲とふたつでひとつ,といったような同じタイプの曲.アルバム全体をひとつにする役目を果たす. 14,I've Only Got Two Hands 実はポールは多くのアルバムで最後にこの手の実験的サウンドを用意する.インストゥメンタル.ウイングスでピンクフロイドっぽい曲があったり,これもプログレ風なところから,ポールは未だ音楽を追求しているのだろう. ![]() 7,Too Much Rainピアノで始まり,そこにアコースティックギターが重なる.アレンジの統一感を損なうことなく,逆にそれは,淡白で冒険のない曲.聞き易くBGMとしては最高だが,歌詞を手に熱心に聴くには,報われない.しかし,こんなロック史に無意味な曲でも,聴けてしまうのが,ポールのマジカルか.アルバム通してみて,順番も良く,あると気づかない,が,ないと嫌,といった役割を担う. 8,A Certain Softness このアルバムに最も相応しくない,南米調な曲.一瞬,Press To Playの様なパーカッショナブルな面があり,少し戸惑う.サウンドとしてはアコースティックなので,初期ビートルズの様なアレンジでも良かった気がする.
6,English Tea
名曲.ポールがビートルズに在籍していた,あるいは,ビートルズが今の世紀まで語り,聴き継がれている理由の一端にあるのは,ポールにこういう曲が作れる才能があったからである.彼の共通イメージに,超名曲を作る,があるといえよう.この曲は,ポールの作るような名曲を作る,という目的で作った,というような,わざとらしい程にポール節の曲.これが時々あるから,いつまでも現役でアルバムを作って欲しいと思ってしまう. ![]() 5,Friends To Goアコースティクギターの曲.旋律の方向,目的のない,どういう曲か,という説明の難解なメロディーの弱さ,未完成さを感じる.そのためか,アレンジはかなり濃く,シンプルながら強めで多少強引なものに仕上げた.ポールの曲はひたすらポジティブであったが,非常に灰汁が強く,変なメロディーという特徴があり,そしてそれが彼の武器だった.この曲がこのような仕上がりになったのは,本来あるべきの灰汁が全く見られなかったために取られた対策ともいえる処置だ. ![]() 4,At the Mercy シビアなメロディーと,歌詞が変わっている,多少不可解な曲.今回のアルバム全体通して言えるのだが,殊更この曲は,ポール特有の甘いロマンティックな部分がどこにも無い.映画音楽のメロディーの様なインパクトを持ち,映画音楽に歌詞を付けて歌うとこんなにも不思議な印象を受けるのか,といった感じである.そういう音楽にも関わらず,アレンジはやっぱりマッカートニー風な為,少しアマチュアの宅緑っぽい.この曲に関しては,もっといじるか,収録を見送るかして,別パターンのアレンジの方が活きたのではないだろうか.スペシャルパッケージのDVDで,この曲について解説と共に,演奏シーンが収録されていて,そこではこの曲の間奏で,ドラムと同じタイミングで花火が鳴ってるシーンを組み合わせ,歓声があがる,という映像コラージュを施しているが,それが何より素晴らしい. ![]() 3,Jenny Wren アコースティックギターによる弾き語りの曲.ビートルズ時代,インドでドノバンに教わって以来,ブラックバードに始まったヒィンガーピッキング奏法だ.このタイプの曲は彼の守備範囲内であり,過去に類似する曲が多く存在する.個人的には,こういう曲のみで構成されたアルバムを聴いてみたい.と考えてい,それ位いつも完成度が高い.短く,儚いが聴き終わった後の満足感は素晴らしい.今回は,先にも述べたように,コンセプトが,ポールマッカートニー風アルバムなので当然入れなくては,といった感じで作ってくれたのだろう.ポール自身によるホルンもこの曲の特筆すべき箇所にあたる. ![]() 2,How Kind Of You 様々な生楽器の単音の集合で作られた伴奏に,ポールのボーカルが乗せられる,今までには無かったタイプ曲.アンビエントな雰囲気で曲がスタートしている為,終盤でドラムとギターがシンプルに重なるだけなのに,壮大なスケール感を聴き手に与える.メロディーもポール独特の,耳に馴染むまで何度も聴かなくてはならない,不思議な旋律である.それは彼の曲の特徴のひとつであり,始めは取っ付き難いが,聴いていく内に,段々染み込んで最終的にはポールらしい曲だな,となってしまうから奇跡だ.エンディングに入ってくるピアノのアレンジを聴くと,天才的な才能の持ち主である証明,とも言える. ![]() 1,Fine Line オープニングにしてアルバム最強のナンバー.ピアノのコードプレイを基本とした,シンプルでストレートな曲だが,間奏における独特のセンスや,転調など,やるべき事をキチンとやっているロックの模範曲.今回の意向として,ポールマッカートニーらしさを出すアルバムを作りたかった,とプロデューサーは言う.ポールの作る曲に対しマッカートニー風アレンジがしたかったと言っている.その為全ての楽器をポール自身が演奏している.ビートルズがロッカーに与えた影響は計り知れない,一番始めに曲を作ったのは彼等だ.方程式に当てはめ無くともポールが作る曲はどの曲もお手本なのだ.しかし,プロデューサーである,ナイジェルの手が加わる事で,ワザとらしい位のポール節が出ている.そのプロデュースについて,インタビューを調べると,アレンジなどもその楽器を弾くポール自身で作ったようだ,つまりナイジェルがした大きな仕事は,実際にアレンジなどに手を加えるのでは無くポール自身で弾いてくれ,という一言を言った事,に集約されていると思う.その為,ポールも意識的にポールらしくプレイし,今回の様な素晴らしい出来となったのではないだろう か. ![]() ポール・マッカートニーは今も生きている.ジョン・レノンは死にジョージ・ハリスンも死んだ.しかし,音楽という世界を進化させたビートルズという伝説のグループで数々の奇跡を見せた男・ポール・マッカートニーは活発なのだ.ライブを世界規模で行い,過去の名作としてラジオから流れるのでは無く,作者本人によって演奏され,唄われてる,つまり彼の活発な活動とは,未だに僕達に奇跡を見せてくれている,という事だ.何て有難い.慈悲深い人だろう.全曲解説をしたい. 14,Waltzing1曲目の別アレンジバージョン.くじらトランペットと女性ボーカルのみで,な んだかやけに物悲しい.先ほどのTHE SUZUKIの曲と歌詞が一部流用されている所 なんかは,流石ライダーズである.ライブの入場曲に使われていて,そのハマり 具合からして今後もしばらく使われる事と思われる.こうしてみると,ライブで はオープニングとして流してる曲が,レコードではエンディングに位置するとは ,計り知れない奥深さを感じてしまうのは考えすぎだろうか? 13,地下道Busker's Waltzくじらさんの作曲作詞.くじら作風その弐,の曲である.今の所,発表後からず っとインストアイベントとライブで必ず演奏されている.メンバーみんなで歌え る曲を,とのリクエストで作った,と自身が語っていた.この曲もヤッホーナン マイダと同様の,現在のライダーズならでわの雰囲気が詰まっている.曲の終わ りに小さい声で歌が続くが,それは慶一氏と博文氏のTHE SUZUKI(?)でセッシ ョンしながら出来た曲だそうだ.くじら氏の曲はシンプルな分,いつもメンバー の色々な手が加わる.今回のこの手法は,前作のアルバム,俺はそんなに馬鹿じ ゃない〜涙は俺のもの,のやり方と同じで,アルバムの多彩ぶりが実に効果的に 醸し出ていて,始めから終わりまで通しで聞いた時の,ボリューム感を増加させ る役目を果たしている. 12,ひとは人間について語るかしぶち先生作詞作曲.素晴らしい曲.かしぶち先生の持てる才能最大といった 重厚感,且つ,先生なりの暗黒感漂う,凶悪犯罪の極みの様な作品.今までだと ,この手の曲は,慶一先生が歌いそうだったが,しぶちかさんの歌によって深み と渋さがより一層引き出ている.アレンジ面ではドラムヒットで“ダッダッ…( 無音の中で)つまりひとは〜”となっていて,普通なら無音の部分でフィルがあ る方が効果的なのだが,それはライブなどでの演奏用に,レコード版には敢えて 入れてないんじゃないだろうか.大サビでのゴスベル入りのコーラスばりボーカ ルは正に圧巻だ. 11,ばら線の庭博文氏作詞作曲.新しい曲なのだが,狂犬や,ただぼくがいる,の博文流アナロ グソング路線な為,前から親しんだライダーズナンバーだと錯覚する.押さえた 声と,とことん生に拘った,といった楽器の音が,非常に味わい深い.彼も作曲 にパターンが存在し,その枠からはあまりはみ出す事はない.それは独自の美学 がすでに固まっている事を意味し,自分への探求はもう済んだ,自分の作風は見 つけ出せた,という事なのだろう.個人的に,フー氏は変なメロディーの曲がハ マる様に感じる事を禁じ得ない.ウルフ,などのポップな物や,月の爪,などの 様な物をまた聞いてみたくなる.月の爪は今でも色あせない,21世紀の歌だ, と考えてる. 10,真実の犬くじらさんの作曲に博文氏の作詞.くじらさんの作風は大きく二つの形式に分け ることが出来る.ひとつは,最後の木の実,の様な少し荒い,酒場の雰囲気な曲 .もうひとつは,楽しいとうれしい,の様な呟きながら気ままに作った,といっ た感じの独特な曲,である.今回の収録曲の二曲はこのパターンにもとずいてい る.この真実の犬は呟き系のもの.くじらさんの曲はアレンジがいつも難解で,毎回か なり凝る傾向にあるが,今回も,今までのライダーズには無いアレンジで興味深 い.慶一氏HPのネットラジオで,くじらさん本人による解説が語られていて,デ モバージョンも公開されている. 09,親愛なるBlack Tie族様、善良なる半魚人よりこれを待っていた.慶一氏の十八番,目まぐるしい展開の止まらないプログレ. 夜のブティック,ジャップアップファミリー,オーナンテ言ウ事ナンダロウ, などこれまで慶一氏は度々プログレを作って来ていた.今まではコンピューター を駆使した打ち込み感があり,慶一氏の一人作業的なサウンドだった.しかし今 回の曲はバンドサウンドな仕上がりで,生の楽器の暖かさがある.組曲式プログ レは,普通のメロディーを寄せ集めて繋げたって何の意味も無い.慶一メロディ ー独特な暗さと灰汁の強さがあって初めて組曲は成立する.陰と陽が絶妙に絡み 合い,曲が一度も途切れずに一気に聞ける,聞き入ってしまう.奇をてらったア レンジも無く,バンドの充実感が伝わる.史上最高の曲だ,間違いなく. 08,夢ギドラ'85白井良明作詞作曲.タイトルからは想像のつかないポップバラード.アイドルが 歌いそうなメロディーが,飾り気の無い歌詞によって性転換されている.アレン ジはアルバムで最も洗礼されている.歌も余計なエフェクトが無く,素朴な雰囲 気の曲だ.この曲もそうだが,アルバム通して今回の収録曲は全て,バンドとし て,こういった類の曲を持ち歌として演奏した時,他のバンドへの驚異となる, といった曲ばかりとなっている気がする.勝手な想像で,ライブの再現は難解で は?と思っていたが,あっさり再現されていて,ライダーズの技術を改めて思い 知らされた.
07,さすらう青春
かしぶち哲朗作.先生の作品は何と言っても歌詞が優れている.元々比喩の多くに,説明しない言葉を使う作家だが,今回は解り易く,ストレートに恋愛を例えている のは,コンセプトに沿った為だと考えられる.歌詞の観点からもリンクするように, 曲もあまり奇抜な物ではなく,必然とストレートなポップとなった.しぶちか作風 の神髄といった所だろう.冒険は無いが,何度でも聞ける素敵な曲だ.詞と曲の安定 感はメンバー随一であり,その健在ぶりが覗ける.しぶちかボーカルも聴き所だ.ア ックスライブでは,先生が欠席だった為,なんとメンバー全員が一行づつ歌うとい う,スペシャルバージョンで演奏された.
06,Bitter Rose
ビットール作.シンプルなメロディーとシンプルな構成.小さくまとまった佳曲といった感じだが,演奏時間ほとんど流れっぱなしのホルンと貯めの効いたドラミン グがスケール感を効果的に出している.やはり,ライダーズにはビートルズの陰が 見え隠れしている.洋楽のように,Aメロが中心の曲である.'90時代のポールマッ カートニーの香り漂う.天罰の雨など,ホルンを使用してシンプルにまとめる曲が 今の岡田作のブームなのかもしれない. ![]() 05,銅線の男 博文さんによる渋くダークなスローヘビーロック.今回の曲も,待ってましたという感じのビートリーナンバーだ.フーのビートルズ指向はメンバー随一じゃないだろうか,この曲もメロディーは勿論,中期ビートルズサウンドを象徴とするトランペットやシンプルなギターリフ,(元々しぶちか湊法の特色だけど)60年代風のドラミングと音色など,アレンジにその傾倒ぶりが伺える.トランペットやしぶちかドラムにとっては,この手の曲が最もハマってると思う.サビのベースのリフに至っては正にポールマッカートニーそのものだ. ![]() 04,ヤッホーヤッホーナンマイダ 白井作.作詞は,ファクトリーでしぶちか先生の代理を努めた坂田学氏の父によるもの.この曲,氏らしさ満天といった作品だ.白井さんはありとあらゆるロックナンバーを残していて,常にその時代毎に相応しい曲を作る作家である.今回の曲は少し歳を取った,がしかしまだまだやり続けるよっ,といったパワフルなおじさんのロック,という様な感じになっている.今のライダーズに実にぴったりだ.これまでの発売イベント,ライブで必ず演奏され,ライダーズはレパートリーとして扱っている,という印象を受ける.アックスでのライブでは客を3分割し,ヤッホー,の合唱をするなど,非常に愉快な演奏だった. 6月23日,NHKでライブビートの公開録音があった.アルバム発売キャンペーン最後のイベントだ.僕は渋谷,新宿でのイベントにも参加したのだけど,この会場の広さとライダーズの距離は,それらに似ていてとても近くに感じる事が出来た.彼らの前に前説があり,次に僕は知らなかった海外のミュージシャンがライブを一時間程した.彼らは番組上においても,どうやら前座だった様子で一時間という時間はとても長く,立ち見だったせいもあり,かなり辛かった.がしかし,前座で一時間だったという事は,メインのライダーズはそれ以上なのだろうか,と期待が膨らみ,待ち通しくも楽しみに感じながら外人の演奏を聴いていた.彼らが終わり,セッティング準備に15分程かかった後,照明が暗くなった.最近の入場曲としてお馴染み,Waltzingが流れた.曲に溶け込みながら,彼らが登場した.ムーンライダーズだ.慶一氏が中央,向かって左にクジラ,右が良明番長,慶一氏の真後方にフー,クジラの真後方にビットール先生,という配置だった.フーと慶一氏は椅子に座っていた.かしぶち先生はこの日も欠席だった.少し残念だった.代わりはアックスと同様カーネーションの矢部氏だった.セッティングが終わり,入場曲が終わり,慶一氏が歌い始めた.何度見てもとてもかっこいい始まりだった.この日の曲目は1.Who's gonna die first 2.ヤッホーヤッホーナンマイダ 3.銅線の男 4.夢ギドラ’85 5.スペースエイジのバラッド 6.Wet dreamland 7.地下道Busker's Waltz 8.Waltz for Postwar,B 9.BEATITUDE と演奏した.曲間に何度かk1氏がMCをしていて,かしぶちさんの欠席,容態は順調である事の報告や,30周年に向けてアルバムを出したりしますので色々お金を使ってください,とか言ったり,また夢精の歌の解説中にメンバーに静止されたり,とても楽しく,彼ら自身も充実して演奏している様にとれた.最後の曲が終わり,大喝采の中,退場した.しかし,客の拍手が鳴り止まず,アンコールに応えて再び登場してくれた.これには僕を含め恐らく客も驚いた筈だ.こういった公録の場でまさかアンコールに応じてくれるとは,奇跡じゃないかと思った.NHK側の配慮にも感謝したい.余談だが,NHKの職員達の,僕らに対する待遇の良さは特筆に価する.今まで様々の公録に出掛けているけど,どこの局員も対応が酷く,不快であった.そういう対応は,その局にとってもマイナスだし,そこに出演するアーティストを観に来ているファンを,荒く扱う事は,そのアーティストにも失礼になる.僕は現実に,最近の渋谷タワーレコードでのライダーズイベントにおける販売員の有様を見た.あの苛立ち方は度が過ぎているんじゃなかったか,と問いてみたい.しかしNHKはタワーレコードに代表される傍若無人とは人種が違っていた.終始快く対応してくれたし,その対応を受け,僕も迷惑掛けまいと微々たる物だったかもしれないけど,努力した. アンコール:Frou Frou 一段と大きな拍手の中,ムーンライダーズは退場した. 今回の会場は今まで僕が体験した事が無い程小さかったせいで,あらゆる音を聴く事ができた.こうして振り返ると,ムーンライダーズの音楽は,アレンジが繊細で,ひとつひとつの音が非常に重要である,という事を再確認した.大きいホールで大きいスピーカーの音を聴くよりは,実際の楽器の音が聴こえる位の会場の方が楽曲の良さがより引立つ気がした. ![]() 03,スペースエイジのバラッド 岡田氏による作.アルバムから,シングルカットされた訳ではないのだが,PVが制作された唯一の曲.優しく素晴らしいメロディー.最終バースの合唱も印象的だし,出だしからのAメロの途切れる事無く続く歌とコーラスは秀逸だ.慶一氏のボーカルに着いて行く,子供の様な声がユニゾンで入っているが,ライブを観る限りビットール先生による,久々のボーカルの様だ.アレンジは楽しげな雰囲気に仕上げている.とにかく名曲で,メロディーの良さはライダーズ史上一二を争う.最後のナレーションは慶一氏の実父に頼んでいるとの事.
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